コラム

空き家・賃貸物件を“負動産”から“収益資産”へ【1/5】

2025年09月17日 12:20

沖縄本島に不動産を所有しているオーナー様から、よくこんな声を耳にします。
 「相続で空き家を持っているが、なかなか貸せない」
 「通常の賃貸に出しているが、家賃収入が思うように伸びない」
 「将来の資産価値を考えると、このまま賃貸経営を続けてよいのか不安」


このような悩みを抱えるオーナー様は少なくありません。特に空き家は、固定資産税や維持管理コストがかかる一方で収益を生まないため、“負動産”になりやすいのが実情です。また、通常の住居用賃貸も築年数が経つほど家賃水準が下がりやすく、長期的に見ると収益性の低下が避けられません。一方で、近年沖縄本島では「新しい借主層」が現れています。それが、自ら民泊を運営したいと考える事業者や個人投資家です。彼らはホテル不足や観光需要の高まりを背景に、借りてでも民泊事業や投資を始めたいと強く望んでいます。つまり、オーナー様にとっては「民泊運営可能な物件として貸す」ことが、新たな収益機会となっているのです。

【所有物件が“負動産”になる理由】
空き家を所有している場合、収益を生まないどころか、毎年の固定資産税、庭や建物の維持管理費用、老朽化に伴う資産価値の下落など、マイナス要素ばかりが積み重なります。防犯上のリスクや近隣からの苦情も発生しやすく、放置すればするほど“負動産”化が進むのです。また、すでに居住用として賃貸しているオーナー様も安心できません。築年数が経てば家賃は下がり、修繕費や入居者の入れ替えコストも発生します。結果的に、期待したほどの利益が残らず、「貸しているのに資産が増えない」という状況に陥ってしまうのです。こうした背景から、「ただ所有する」あるいは「通常の住居用賃貸に出す」だけでは、資産の最大化につながらない時代に入りつつあります。

【沖縄本島の観光需要と“民泊ニーズ”】
沖縄本島が特別なのは、観光需要の高さです。国内外からの観光客は増加の一途をたどり、特に那覇市、北谷町、読谷村、恩納村、名護市、本部町、今帰仁村といったエリアは強い宿泊需要に支えられています。
■那覇市:短期滞在やビジネス需要が多く、アクセス重視の宿泊ニーズ
■北谷町・読谷村・恩納村:リゾート人気が高く、家族・グループ旅行に適したエリア
■名護市・本部町・今帰仁村:自然や観光資源が豊富で、長期滞在型に人気


さらに2025年7月25日、名護市と今帰仁村にまたがって開業した大型テーマパーク 「ジャングリア沖縄」 が注目を集めています。恐竜サファリや熱気球など20以上のアトラクションを備え、年間100万~150万人の来場が見込まれています。沖縄県の試算によれば、その経済波及効果は2,177億円。そのうち約1,300億円が宿泊需要に関連するとされ、北部エリアの賃貸・宿泊ニーズは一段と拡大する見通しです。こうした状況を背景に、「借りてでも民泊運営を始めたい」という事業者や個人投資家が急増しているのです。

【民泊用賃貸の魅力:通常賃貸より高い賃料水準】
オーナー様にとって注目すべきは、民泊用賃貸が通常賃貸より高い賃料を期待できる点です。例えば那覇市内の1LDKマンション。通常賃貸では月8万円前後が相場ですが、民泊運営を前提にした借主であれば「運用益が出せる」ため、10〜12万円の賃料で契約が成立するケースもあります。恩納村や名護市の戸建てでは、通常10万円程度の賃料にしかならない物件が、民泊利用を前提にすれば15万円以上で貸し出せることもあります。借主にとっては宿泊料収入が見込めるため、多少高い賃料を払ってでも借りるメリットがあるのです。つまりオーナー様は、民泊運営したい借主に貸すことで、安定的かつ高水準の収益を確保できる可能性があるのです。

【契約上の注意点】
もっとも、民泊用賃貸には注意も必要です。借主が適切な許可を取らずに運営した場合、トラブルや近隣からの苦情に発展する恐れがあります。そのため、契約時には以下の点を明確にしておくことが重要です。このように契約内容を整えることで、オーナー様は安心して物件を貸し出すことができます。
■契約形態:普通賃貸借ではなく、定期借家契約を選ぶケースも有効
■使用用途:契約書に「民泊運営を目的とした使用」と明記
■責任範囲:近隣対応・原状回復・修繕費用の負担を事前に取り決め
■法令遵守:借主が必要な許認可を取得することを契約条件に盛り込む

【まとめ】
沖縄本島の不動産は、従来の賃貸や空き家放置では資産価値を活かしきれません。しかし、増加する観光需要と「民泊を始めたい借主」の存在を背景に、民泊用賃貸という新しい活用法がオーナー様に大きなチャンスをもたらしています。ジャングリア沖縄の開業も追い風となり、特に北部エリアの需要はこれから数年でさらに拡大するでしょう。空き家や既存の賃貸物件を「民泊運営可能な賃貸」として貸すことは、資産を守りながら収益を最大化する選択肢のひとつです。所有するだけの物件を、“負動産”から“収益資産”へと変えるために──。今こそ、民泊用賃貸という新しい活用法を検討してみてはいかがでしょうか。


次回は、「なぜ沖縄本島で民泊用賃貸が注目されるのか」をさらに深掘りし、オーナー様が得られる具体的なメリットについて解説します。